では収録内容の詳細を
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FINAL SHOW (VHS版)
(約1時間58分収録) |
本作はDVDではなくって、VHSテープ。米国のRF−VIDEOってちょっ
と怪しいプロレス・グッズの通販屋から1本12ドルで発売されている代物
です。さてこのRF−VIDEO、元々はECWの映像部門を担当していた人
達が立ち上げたお店のようで、現在は日本の新しいもの好きのアンテナ
の高いマニアさんが注目している新興団体ROHも経営しとるみたいや。
ま、ROHについては別に紹介欄があるので割愛して、ECWに戻ります。
このRF−VIDEOってお店、前述したようにECWの映像部門を担当して
いた人達が運営しているお店なので非常にECWの映像が充実しており、
商品としてHPに掲載されているECWの興行数は尋常やないんですワ。
多分最初期以外の興行なら大抵が揃うと思いますし、PPVではない通
常のハウス・ショーでの映像も勿論あるので、当時のドサ回り興行でどの
ようなカードが組まれていたのかも分かることから、データ・ベースとして
活用することも可能です。
そんなRF−VIDEOからまずワシが買ったのがこのテープ。2001年1月
13日のアーカンソー州パインブラフ大会ですワ。
ECWに思い入れのない方ならフーン、あっそうなのってなるんでしょうが、
この興行こそはECWの『最終興行』なんです。
ここでいまさらECWがプロレスってジャンルに与えた影響を一つ一つ論
えても仕方がないから止めますが、こんな貴重な映像がキチンと残され
ていたって事に感謝しつつテープを再生してみますワ。
○ようこそアーカンソー州パインブラフへ
以前、週刊プロレス誌の片隅にECWの最終興行がアーカンソー州の
パインブラフで行われたと書かれてあったのを記憶していたワシ。
ただ米国の地理を不勉強でして、ずっとアーカンソー州ってカナダ寄り
の年中寒そうな位置にあるって思ってましたんや。そんなところで1月
の興行、多分客席に人影はまばらで身も心も凍てつくような最終興行
であったのやろなとずっと想像していたんです。
けどネットで米国の地図を検索してビックリ。アーカンソー州ってオクラ
ホマ州とテネシー州にはさまれた米国中南部の州なんやね。
しかもテープを再生すると超満員とは言い難いものの、スタンド席を含
めて結構大規模の会場にそれなり以上の観客が詰め掛けてますんや。
年明け早々客もまばらのガラガラの冷え切った会場で終焉、勝手にワ
シが思い描いていた情景が音を立てて崩れて行きました...(苦笑)。
しかし経営難であるとの情報が常々伝えられていたECWですが、これ
が『最終興行』であると事前に公式発表でもしたのやろか。
それともECWのドサ回りって、毎回これくらいの動員力があったの。
こんなにお客が入っているのに、なぜECWって崩壊したのやろか。
ポール・Eさん、ホンマのとこを教えてくれまへんか。
@Prodigy vs. Nova
初期ECWでステービィ・リチャーズ君やブルー・ミーニーらとアホな
ユニットを組んでいたノヴァもなかなか格好よく一本立ち。この夜は巨
漢オズをマネージャーに従えたプロデジィと対戦や。
このプロディジー、ノヴァとは逆にECWの最後期にデビューしたはず
で、これまで正式発売されたどのDVDにも試合模様は収録されてお
らず、ワシ自身ちょっと期待しての観戦となりました。
ま、与えられた時間が僅かであったためか、余りエエところも出せず
マネージャーのオズ介入に激高したノヴァの顔面砕きに沈められて
しまいましたが、ECWが存命なら今頃はそれなりのポジションを掴
んでいたのやないやろか。
AChristian York & Joey Matthews vs.
Hot Commodity (Julio Denard & EZ Money)
女性に人気のヨーク&マシューズの色男チームと、EZマネー&フ
リオ・ディネロから構成される嫌味系チームのホット・コモディティ。
試合前には互いにコーナー・ポストに上がってどちらが人気(もしく
は不人気)があるかを競い合うって古典的展開もありまっせ。
で、試合の方は色男組の編隊飛行による場外ダイヴや、嫌味組の
巧みなインサイド・ワークと見所も多数。
最後は色男組の合体パワー・ボムでディネロが沈められました。
BYoshihiro Tajiri vs. Super Crazy
WWFに転出して確固たるポジションを確立したタジリですが、メジ
ャーの連中に囲まれても決して見劣りしないセルフ・プロデューの方
法を会得したのはECWって場所だったはずで、特にレスリング技術
においてはこのクレイジーとの絡みは大きな収穫やったと思います。
で、やはりというか『最終興行』でも両者の対決が組まれましたんや。
さすがに両者ともこの試合には思うところがあったのか、クレイジー
はカメラに向かって「見てろ、メキシカン・スタイルだ」、タジリは緑の
毒霧を吹き上げた後にこれまたカメラに向かって“日本語で”「まいっ
たか、この野郎。今日は出血大サービスで行きますよ」とコメント。
試合はタジリのタランチュラや日本製丸ノコ蹴り、クレイジーのローリ
ング式吊り天井〜変形ストレッチへの移行と目まぐるしく展開し、最
後はクレイジーがタジリをクルっと丸めてフォール。試合時間に制約
があったのかコンパクトにまとめられた感じの一戦やったけど、その
分だけ密度の濃い良い試合でしたワ。
CDanny Doring & Tommy Dreamer vs.
FBI(Tony Mamaluke & Little Guido)
初期ECWでグイドーが始めた『純血イタリア人』ギミック。移り変
わりの激しかったECWマットにあって、グイドーの忍耐力の賜物な
のか何度も相方が変わったものの、常に中堅以上のポジションをキ
ープして来たのは賞賛に値する事実や。で、それに応えようとでも
思ったか、『最終興行』で『純血イタリア人』の前に立ちはだかったの
はドーイングの紹介で花道奥から姿を見せたトミー・ドリーマー。
これまで余り絡んだことのないドリーマーとグイドーなので、これはち
ょっと嬉しいカードでしたワ。ただドリーマーは体調不良が顕著で、
身体も絞りきれていないし、動きも緩慢やった。ま、その分お客さん
を楽しませようとグイドーの発案で試合途中にレフリーを巻き込んで
のダンス・コンテストもあったワ。そして最後はドーイングのレッグ・ド
ロップによりママルークが沈み幕。
ECWの精神的支柱であり続けたドリーマーと、何時もチラチラっと
隠し持った渋い実力を試合中に披露しながら、ずっとアホ丸出しの
『純血イタリア人』ギミックを貫いたグイドー。両者にとってのECW
での歴史にひとまずピリオドが打たれた瞬間です。
ホンマ、お疲れさんでしたな。
DJack Victory vs. C.W. Anderson(w/ Lou E. Dangerously)
ECW編入直後の試合中に首を負傷し、以降ずっと車椅子生活を
送っていたビクトリーですが、この夜は元気に試合に参戦。なんとア
ンダーソン相手に堂々と喧嘩戦を要求でっせ。
当然アンダーソンにも異論などなく、すぐに椅子やゴングが飛び交
う荒れた試合へと発展。途中アンダーソンのセコンドについたルー
・E・デンジャラスリーが凶器代わりに使えと携帯電話をトスするも
のの、これがビクトリーに渡ってしまうって場面もあり、ルー・Eや携
帯電話がECWにおいて何を意味するブラック・ジョークであるのか
を解する者に随喜の涙を誘いよります(笑)。
試合はルー・Eや悪役レフリーの介入によりビクトリーの敗戦色濃
厚となった瞬間、会場内に高らかにAC/DCの名曲『地獄のハイ
ウェイ』が鳴り響き、スパイク・ダッドリーが登場。十八番のアシッド・
ドロップによってルー・Eとアンダーソンを葬り、ビクトリーに『ビクトリ
ー』をプレゼント(←ちょっとベタやったかなァ)や。
EMichael Shane vs. Oz
これ、RF−VIDEOの商品紹介欄には掲載されていなかった試
合でして、嘘か誠かあの“HBK”ショーン・マイケルズの血縁にあ
たるらしいマイケル・シェーン(嘘っぽい名前やなァ)が@の試合で
姑息な介入行為を行っていた巨漢オズを料理しとります。
あ、オズですが、若いのか年寄りなのか全く判らない選手でして、
締りのない巨体と銀ラメ入りのショート・タイツを小粋(苦笑)に履き
こなす様は、まるでトミー“野生の炎”リッチのよう。
どちら様か、こいつの詳細なプロフィールを御存知ないでしょうか。
FECW World Title Match :
Rhino vs. Spike Dudley
2001年1月7日に開催されたECW最後のPPVである『GUILTY
AS CHARGED 2001』にて半ば強奪気味にサンドマンから世界王
座のベルトを引き継いだ獣人ライノ。1月12日のポプラブラフ大会
でサンドマンのリターン・マッチを退けたようで、今夜はECWでダン
トツのやられっぷりを誇るスパイク君を挑戦者に迎えました。
ま、『脚本家』の筆が滑りでもしない限りタイトルは移動することの
ないカードで、後にWWFの看板番組『RAW』にてポール・Eがライ
ノの事を「こいつがECWの最後の王者だったんだ!」と紹介した場
面をご記憶の方なら、試合の結果も容易に想像出来るでしょ。
けどさすがにスパイク君、最後の最後まで身体を張ってましたデ。
ライノの振り上げる椅子やテーブルへのパイル葬を決してスカす事
なく全て受け切り、挙句の果てに椅子の上への手加減抜きのパワ
ー・ボムから脳天杭打ちをまともに喰らって見事に憤死。
多分満足なギャラなんて出なかったであろう本興行に、只の一瞬も
「こいつら手を抜いとんなァ」なんて思わせる場面を見せる事のなか
ったライノとスパイク君。これまた見事な散り様でした。
GJustin Credible(w/ Francine) vs. Sandman
HImpromtu rematch :
Justin Credible(w/ Francine) vs Sandman
『最終興行』の大トリを意識したか、頭に被った黒の帽子と正反
対の純白の衣装で花道に現れた『エクストリーム・クイーン』のフラ
ンシーン。死装束とも、ECWと結ぶための婚礼衣装とも受け取れ
る井出達で、ジャスティンをエスコートしとります。
で、例によって名曲『エンター・サンドマン』をフル・コーラス使用して
堂々と会場を練り歩きホロ酔い加減でリングに辿り着いた我等が
サンドマン。酔っ払い親父にも『最終興行』に対しての思いはある
のか、各コーナー・ポスト下へ缶ビールを置いて回ってますワ。
そしていよいよECWのマットに最後のリング・ベルが鳴りました。
試合は予想外にじっくり見せてやろうとの展開で、そうか、そう来
るかとこちらもモニター画面に映る試合を凝視した途端、リング下
のフランシーンがサンドマンの足を引っ張り、これによって呆気な
くサンドマンがフォール負け...。
けど安心してや、こんな試合ではECWは幕を降ろせません。
で、一度控え室に戻ったサンドマンが梯子や廃材が山盛りの手
押し車を押しつつ花道に現れ、『泣きのもう一回』が始まりました。
さぁここからは毎度お馴染みの名場面の再演でっせ!!!。
梯子で殴ったり、梯子にぶつけたり、梯子を急所に叩き込んだり
の各種梯子スポットを中心に配置し、フランシーンによる股間を
相手の顔面に擦り付けるかのようなブロンコ・バスターなんて実
に羨ましい場面などの正にエクストリームなシーンが走馬灯のよ
うに繰り広げられ、最後は何処かの廃屋の天井から外してきた
ものと推測される照明器具の残骸に向けて、サンドマンがジャス
ティンを脳天杭打ちにて叩き付けてクリーン・フォール。
最終興行の最終試合であるため、もう遺恨の仲を演ずる必要も
ないのやろね、サンドマンとジャスティンがリング上で抱擁してお
りますワ...。
○大団円、そしてECWよさようなら
ジャスティンが花道を控え室に向けて引き下がると同時に、控
え室からは本日の興行に参加した全選手が現れてリング・イン。
ドリーマーの挨拶、続くサンドマンの乾杯の音頭で全員が缶ビー
ルにより乾杯。あちこちで選手同士が抱擁しております。
【総評】冒頭にも書いたのやけど、ワシが勝手にECWって極寒の
地で人知れず散ったと思い込んでいただけで、実際は大勢の観
衆に見取られて結構幸福そうに『最後の刻』を迎えてたんやね。
そんな事あるかってポール・Eなら怒りよるかも知れんけど、EC
Wがアメ・プロに与えた影響、ここで修行を積んだ選手達の現在
の活躍振りを見ると、ECWって天命をまっとうして何ひとつ思い
残すことなくあの世へ旅立てたのやないやろかって思いましたワ。
普段着のままの『最終興行』、まさにそんな感じでしたな。 |

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