では収録内容の詳細を

SOUTHERN DISCOMFORT (約59分収録)
 この作品は「ACW : WRESTLING’S WILDEST MATCHS!」
なるDVDを発表し、世界各地に棲息する『好き者』達を狂喜乱舞さ
せた過剰な表現者フレディ氏による自作自演のプロレス絵巻第2弾
なんです。
ただし前作と違って今作はフレディ氏はあくまで黒子に徹しており、
体現するのではなくって創作する方に回ったみたいですワ。
では真夏の南部のうんざりするほどの暑さが画面から伝わってくる、
アラバマ州はアニストンのサクス高校体育館へとどうぞ。
『テレビのきらびやかなネットワークとは無縁に、アメリカの南部では
アウトロー・レスラー達が小さな体育館でわずかの報酬にて戦ってい
る』ってテロップとともに本作は始まります。

@ポスター貼り
  やっぱり興行に公知ポスター貼りは不可欠。プロモーターのデビ
 ッド・F・フレッドマンさんが愛車でポスターを貼っております。
 けど人通りのまったくない田舎道に放置されたままの廃屋にポスタ
 ーを貼って、誰かの目に止まるのやろか。
A本日参戦したレスラーの方々のコメント集
  ワシは英語が苦手やから内容に触れることは出来ませんが、本
 日の興行に参戦した各レスラーのコメントが収められとります。
 とりあえずレスラーの面々を紹介しときますワ。
 ○リック・モンタナ レスラー兼プロモーター
 ○バンビ NWA認定の女子王者
 ○ザ・フレイム 悪役覆面レスラー
 ○ザ・パワー・ライダー 正義の覆面レスラー
 ○アイアン・シーク 元WWFヘビー級王者!!
 ○ビッグ・ボス・ホス ビッグ・ボスマンのバッタもの
 ○シェイン・アンダーソン ビッグ・ショーの小型タイプ
 ○シャギィ・パイスル 結構かっこいい覆面選手
 ○“ザ・ブレッド”ボブ・アームストロング
   元WWFの人気者ロード・ドッグのお父さん!!
 ○ペギー・リー・レザー 女子のヒール
Bナスティ・スティーヴ・レイン vs. シャギィ・パイルス
  リング・アナの紹介によるとナスティはUSAジュニア王者だそう
 で、対するシャギィもWCWヘビー級のベルトそっくりの豪華な一
 品を肩からぶら下げております。シャギィについては体格も立派や
 し、覆面の下には結構有名な顔が隠されているのやないろか。
 試合はヒール役のナスティが定石通り客席を煽り場内を十分暖め
 た(そんな事せんでも真夏の体育館は暑いんやけど)ところでシャ
 ギィが登場し、火蓋が切って落とされました。それにしてもローカル
 とはいえ、客席は結構の数の観客で埋まり、なかなかエエ雰囲気。
 日本のインディ系ではすれっからしの汚れファンしか会場に現れま
 せんが、ここではちびっ子とお爺さんお婆さんと、ブルー・カラーの
 おじさんのみって構成で、どっちが良い悪いではなくって、そう言え
 ばもともとプロレス会場の観客構成ってこんなモンやなかったんや
 ろかって考え直したりしましたワ。
 試合はシャギィの猛攻にナスティが控え室に逃げ帰って終了となり
 ましたが、ナスティの卑怯な態度にキレたおじさんがパイプ椅子を
 振り上げて猛抗議。そうそう、こんなおじさんも日本のプロレス会場
 からは姿を消したよなァ。
Cザ・フレイム vs. “ザ・ブレッド”ボブ・アームストロング
  悪役覆面(左のジャケ写のレスラー)のザ・フレイム、正体は地元で
 ファミレス“ジャックス”を経営しているフランク・バーンヒルさん
 して、素顔に戻れば地元では人気者のおじさんのはず。けど悪役仮
 面の覆面を被った途端にヒールの血が全開したようで、入場時には
 松葉杖を ついて観戦しているお客さんを突き飛ばすなどと大暴走。
 対する“ザ・ブレッド”ボブ・アームストロングは前述したように元WW
 Fのスーパー・スター、ロード・ドッグのお父さん。
 十分に時間を割いた各自のバックボーンや人となりを説明するコメン
 トが理解出来ればもっと楽しめたんやろけど、英語が理解出来んで
 も画面を追うだけでも興味深く観戦出来ましたデ。
 また本DVDの企画立案者であるフレディ氏も目立ちたがりの血が騒
 いだか、この試合では悪役仮面のマネージャー役として登場や。
 ボブのテンポの良い攻めに守勢に回った悪役仮面に『火の玉の種』
 を手渡すなど、コソコソと暗躍しとりますワ(笑)。
 けど手渡した火の玉がボブではなくレフリーを直撃。思わぬ展開に
 呆気にとられたままの悪役仮面を、ボブがここぞとフォールしました。
Dバンビ vs. ペギー・リー・レザー
  会場人気を独り占めするNWA女子王者のバンビと、サングラスに
 黒ずくめの衣装でヒール役に徹するペギーとの一戦。けどヒール役と
 はいえ、サングラスを外すとペギーの素顔は優しそうなお姉さんや。
 次回からはペイントをした方がヒールらしく見えてエエかもね。
 また試合の前後に彼女達のコメントが収められており、どうも二人と
 も過去に来日経験があるみたい。そういえばペギーは記憶にないけ
 ど、バンビはFMWかW★INGで観たことがあるような...。
 さて試合はペギーが会場の罵声を、バンビが会場の声援を一身に
 浴びる展開で、当然苦戦の末にバンビが勝利を収めております。
 試合後はちびっ子達がバンビの激勝に興奮しきった表情で、バンビ
 に押し寄せます。しかし冷静に見たら、バンビって彼らちびっ子のお
 母さんよりもオバサンかも...。あぁ、アカン。なんでちびっ子らと同
 じ純粋な目でバンビを見れんのやろ...。
Eレスラーの皆さんのコメント集
  レスラーに怪我はつきもの。レスラーの皆さんが順番に怪我をした
 ときの思い出を語ってます。
Fアイアン・シーク vs. ザ・パワー・ライダー
  開場前の場内では、レッスル・マニア8のTシャツを着用したアイア
 ン・シーク(物持ちがエエな)が鋼鉄製のコシティ(新日イズム)を振り
 回し怪力自慢。お前もやってみるかとフレディ氏にコシティを手渡す
 んですが、やはりシークのように上手くは扱えませんでした(笑)。
 さてこの日偉大なる元WWF王者へ挑んだのはウルトラマンと仮面
 ライダーとパワー・レンジャーがごちゃ混ぜになったザ・パワー・ライ
 ダーなる覆面選手。ホメイニ師の肖像画が描かれたイランの国旗を
 振り回すアイアン・シークに、客席から沸き起こる『USAコール』を背
 に勇敢に向かって行きましたが、やはり元WWF王者の牙城は崩せ
 ず、五寸釘攻撃からの強力無比なキャメル・クラッチに沈められてし
 まいました。
 で、ここまで苦戦はするもののベビー役が必ず最後には勝って来た
 こともあって、この大一番での残酷な結果が観客には信じられず、一
 気に場内が冷え切ってしまう結果に。勝負が決した瞬間にカメラが
 捕らえた、観客のおじさんの信じられないって表情は秀逸でした。
 それと笑ったのがアイアン・シークの立派なデベソ。昔漫画でやって
 いた『ド根性ガエル』に出て来た、ヒロシの敵役であるゴリライモの
 デベソそっくりで、家人と二人で大笑いいたしましたワ。
Gバトルロイヤル
  興行の大トリは大人数によるバトルロイヤル。しかもコーナー・ポス
 トに支柱を設置し、その最上部に賞金(?)が入った紙袋がブラ下げ
 られていて、これを奪い合うっていう変則ルール。
 試合はどんどん選手が消え去って行き、気づいたときにはベビー側
 に星条旗仮面、ヒール側にザ・フレイムともう一人が生き残るって展
 開に。で、ここにまたまた目立ちたがりのフレディ氏が介入(笑)。
 悪役マネの定番末路であるベビー役の逆襲を一身に受けてしまいま
 した(大笑)。
 また試合は賞金入り(?)の封筒を一度は悪役側が手にしたのです
 が、星条旗仮面のデッドリー・ドライブを受けた激痛からか、封筒を
 手放してしまうといった大失態。この隙を突いて星条旗仮面が封筒を
 ゲットし、激戦にピリオドを打ちました。
 ウーン、これでアイアン・シークの予期せぬ勝利に沈みきった観客も、
 笑顔で帰路につけるやんか。
 やっぱり興行はハッピー・エンドで終わらんとね。
 しかも出口ではバンビが一人一人に笑顔で応えていて...。
 よかったね、楽しい興行で。ワシもこんな雰囲気なら一度は味わって
 みたいなァ。
 あ、星条旗仮面の正体ですが、レスラー兼プロモーターのリック・モン
 タナでしたワ。

【総評】当HPの常連さんである『キングコングニーさん』によると、本
 興行はフレディ氏がこのビデオを製作するためにブッキングしたもの
 だそうで、だからアラバマ州のアニストンを訪ねてみても何処にもこ
 んな団体はありまへん。けどこの興行が作為的かというとそれも違う
 はずで、アメリカの片田舎では連日連夜このような興行が行われて
 いるんやと思います。
 このDVDを観ていると、アメリカのプロレスって文化を下支えしている
 のはWWFのようなビッグ・カンパニーでも、マニア向けの興行を繰り
 返しているインディ系の各団体でもなく、実に牧歌的な無名レスラー
 達と、何の情報もすり込まれていないちびっ子、おっちゃんおばちゃ
 ん、お爺さんお婆さんなんやなって痛感させられます。
 やはりプロレス発祥の地だけあって、アメリカからはプロレスって文
 化はなくならんやろね。ひるがえって我が日本国はというと...。

【副音声の解説】
  本DVDには副音声でフレディ氏の解説が収録されており、このDV
 Dの本質を理解する上で聞き取る必要があったのですが、なんせワシ
 はヒアリングが苦手でして、当HPの掲示板に以下の書き込みを行い
 まして、『キングコングニー』さんに和訳をお願いいたしましたんや。
 
 それと「SOUTHERN 〜」をアップしましたが、やはり副音声のフレ
 ディ氏のコメントが気になります。
 なんかこれを理解しないと、本作の良さの半分も理解出来ていないの
 やないやろかって焦燥感に襲われまして...。
 お暇なときで結構ですから、フレディ氏のコメントで面白そうなのを
 お教え下さるよう願いいたします。

 で、『キングコングニー』さんからいただいた和訳がこれ。
 ホンマ、いつもいつもお世話になっております。
 
 冒頭に出てくるチラシ貼りのオッサン(知る人ぞ知る’50〜60年代
 のヌーディフィルム・プロデューサー=デイヴィッド・フリードマン氏
 が引退後地元に戻りお祭り的なイベントを手掛けていて、「見世物
 小屋」好きなフレディ氏に「一度覗きにいらっしゃい」と声が掛かった
 のが、元来「自分はフィルム・メーカーだけど、ドキュメンタリー・メー
 カーではない」というフレディ氏に本作を撮らせるキッカケになったと
 の事。
 実を言うと撮影当時は作品の位置付け等、自分でもハッキリ判らず
 に撮ったそうで、ただレスラーには「プロレスとはリアルか、フェイク
 か?」という問い掛けはせず、また舞台裏を暴くという性格の物には
 したくなかったそうです。
 今になって「撮って良かったと」思っているとの事。
 二班の撮影班で全て一日で撮り上げました。
 本作の舞台である南部の小さな町にしては400人もの観衆が集
 まり、彼曰く「LA等と比べると、観客が素直でベビー/ヒールへの
 感情移入もストレート」。
 作品中各レスラーが色々独白していますが、素に戻って発言してい
 る人や、あくまでレスラーを演じている人様々。
 バンビは試合後うずくまって脇腹を押さえますが、「彼女達二人の攻
 防から過去に幾度となく対戦している筈で、このダメージも装ってい
 るもの」とのフレディ氏のコメント。
 またバンビの保持するベルトは以前ギャラを払わずにトンズラしたプ
 ロモーターから「現物」として押収したもの。
 レスラーのバンプについても色々言及していて、フレディ氏の先生は
 モンド・ゲレロ(ラティーノ・ヒートの兄貴にして、DVD「ACW」有刺鉄
 線マッチの相手。因みにモンドのこの時の流血は45分間止まらなか
 ったそうです)。
 レスラーしちゃったフレディ氏の身体は数箇所ボルトが埋まっていた
 り、電流マッチで火傷したりそれなりにボロボロ。
 顔面へのパンチは鼻の横で受けるそうですが失敗して2〜3度折れ
 たとか。今まで受けたもので強烈だったのがボブ・アームストロング
 の胸元への平手チョップと、ブッチャーによる後頭部へのベルト攻撃。
 このエリアにはディキシー・チャンピオンシップ・レスリングを始め近
 隣に諸々のプロモーションがあり、本作登場のレスラー達も自分で運
 転して一日、2〜3試合ハシゴして日銭を稼いでいるとの事。
 ギャラは$20/試合ほど、またバトルロイヤルは通常ノーギャラだそ
 うで、フレディ氏はよく相手に「何時でも落としてくれ」と耳打ちしてい
 たとか。
 本作のバトルロイヤルに出てくる封筒の中身はハリウッド映画の
 「出演契約書」。最後ゲットしたのは作品中リングを設置したり、アナ
 ウンサーを務めるリック・モンタナ。実際本作の前後に自分の映画に
 出演してもらったりしたそうです。
 他のレスラーが巻いて登場するヘビー級のベルトは彼の所有物。
 フレディ氏自身も悪徳?マネージャーとして登場していますが、彼が
 エスコートしているブルネットの女性は地元モーテルの洗濯係りで
 $25/日で雇ったとの事。
 コメンタリー中、「若かった頃」を連発しているのでフレディ氏本人に
 よる試合は今後ありそうもないですが、現在「プエルトリコでレスラーし
 ている息子」がいるそうなので近い将来、新生・ACWが見られるかも
 しれません...。


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