では収録内容の詳細を

2003 HARDCORE CUP (VHS−TAPE)
(約3時間22分収録)
 本作はDVDではなくって、VHSテープ。お馴染みSMARTMARKから
1本15ドルで発売されている団体公認(?)の代物です。
内容は今年(2003年)の5月25日にMAWなる独立団体が開催した
命知らずの猛者8名による第5回デス・マッチ・トーナメント、『ハードコア・
カップ2003』を全編収録したものなんですワ。
さてMAW(ミッド・アメリカン・レスリング)って言ってもなかなか皆さん御存
知ないでっしゃろが、ワシがネットで調べたところによるとどうやらウィスコ
ンシン州のミルウォーキーに活動拠点に置く、今年で旗揚げ十周年を迎え
る結構歴史のある独立団体みたいなんや。
ではVTRを再生しましょか、当日の興行場所は何処かの大型の空き倉庫
のようで、ここにワシが睨んだところ約163名程度の客が鮫かハイエナの
ように血のニオイに誘われて観戦に訪れておりますワ...。

@Horace the Psychopath vs. Ian Rotten
 No Rope Barded Wire, Barded Wire Bat
 Barbed Wire Chair Death Match
  トーナメント予選第1回戦は、IWA−MIDSOUTH所属のイアン・ロット
 ンと、日本のマニアさん達にもお馴染みのホーレス・ザ・サイコパスによ
 る有刺鉄線マッチ。ロットンが持ち込んだ有刺鉄線付きのバットとサイコ
 パスが持ち込んだ有刺鉄線付きの椅子が有効活用され、試合は序盤か
 ら互いに相手の額を切り裂き合う流血戦に。またリング下に両者が座り
 込んで血だらけの額をぶつけ合う頭突き合戦はなかなか見ごたえあり。
 最後はサイコパスがロットンにより、自身の持ち込んだ有刺鉄線付きの
 椅子へダブル・アーム式のDDTで叩き付けられて憤死。
 勝ち誇るロットンが着用するTシャツの背中には、『SPORTS ENTERT
 AINMENT SUCK!』なるスローガンが...。
AMad Man Pondo vs. Bad Boy Hido
 No Rope Barded Wire, Bed of Nails,
 Taipei Thumbtack Death Match
  トーナメント予選第2回戦、トレード・マークと化した『STOP』の道路標
 識を高らかに掲げポンドがリングへ。続いて日の丸(!!!)を掲げ、日
 本では死を意味すると忌み嫌われる4番を縫いこんだフットボール・ジャ
 ージを着用した『日本で一番ガラの悪いレスラー』非道がリングへ。
 正直、ワシがこのビデオを取り寄せたのは彼の名前がカードにあったか
 らで、こうしてビデオでながら4〜5年振りに彼の試合に接することとなっ
 てホンマに感慨無量でしたワ。ま、モニターの前で目頭を熱くしていても
 仕方がないので非道のファイト振りをお伝えいたしますが、なんといって
 敵地米国での試合、当然USAコールの大合唱の中でのファイトを強いら
 れるんです。そやけど非道も米国でドサを廻って図太さに増々磨きがか
 かったようで、USAコールなど寝言にしか聞こえんワって態度で余裕の
 リングさばきを披露。手袋に付けた画鋲でポンドを一撃し、試合中やのに
 煙草を一服。そして煙草を憎々しげにポンドの掌に2度も押し付けよった
 んやから参りましたワ。他にも日の丸攻撃なんて日系ヒールの定番攻撃
 などを随所に盛り込んだ末、最後はポンドによって釘板にカワズ落としで
 叩き込まれ、そのままチョーク・アウト負け。非道、エエ仕事やったデ。
 尚、試合後にポンドと2人でインタビューを受けているところも収録されて
 いるんやけど、ポンドがベラベラ喋った後にマイクを向けられた非道、
 胸を張って「アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ!」と一言。
 いやー、アンタは真のプロや。もう世知辛い日本マットに未練はないやろ。
 広い米国、これからもドンドンと独立団体を荒らしまわってやってんか。
 ワシも遠い島国から応援してるデ!!
BJ.C. Bailey vs. Corporal Robinson
 No Rope Barbed Wire, Four Corners Of Pain Death Match
  トーナメント予選第3回戦、モニターに映った発育不良の高校生風
 ベイレイを見て、あぁこれは数合わせの捨て試合かと思ったんです。
 けどこの試合の残酷さにはデス・マッチ大好き野郎のワシも背筋が凍り
 ましたデ。なんと試合序盤にベイレイがロビンソンにより舌に紙幣を工業
 用ホチキスで打ち込まれ、舌に紙幣をブラ下げて口からダラダラと血と
 ヨダレを流しながら以降約10分間試合を続けよったんですワ!!!。
 お返しのホチキス攻撃やチーズ削り器攻撃、ミスター・ポーゴを彷彿とさ
 せる電動ドリル攻撃などもその後繰り出されましたが、冒頭のショック・
 シーンが頭から離れませんでしたな。あ、試合はロビンソンの勝ちです。
 それにしてもベイレイ、なにか御法度のクスリでもキメて試合をしとるん
 やないやろか...。
C "Spyder" Nate Webb vs. Dysfunction
 No Rope Barbed Wire, Barded Wire Table, Barbed Wire Ladder,
 Falls Count Anywhere Death Match
  ハシゴが導入されたトーナメント予選第4回戦。序盤客席を煽った末
 にウェブが繰り出したダイヴ攻撃が見事にズッコケて「YOU FUCK U
 P!」の大合唱となった時は、大丈夫かいなこの試合って思いました。
 けど汚名挽回とウェブが会場内の小屋の屋根からイスを抱きかかえて
 月面水爆を見舞い、序盤のマイナス・ポイントなんて楽々返上や。
 最後はディスファンクションがウェブにランニング・パワー・ボムを放って
 幕となりましたが、これはなかなか熱い試合でしたワ。
DAustin Aires vs. Adrian Serrano w/ Holly Wood
  ここからの3試合はトーナメントとは別枠の構成。まずはMAW認定の
 ジュニア王座に君臨するエリーズが“シュート・ファイター”風のサラーノ
 を迎え撃ったんやけど、試合開始早々サラーノが出した蹴りがなんとも
 ショボく、いきなりサラーノが“なんちゃってシューター”であることが暴露
 されました(苦笑)。でも試合は“なんちゃってシューター”の腕ひしぎ逆
 十字がエリーズに決まり王座が移動。“なんちゃってシューター”も多分
 UWFのビデオでも観て色々と勉強しとるんやろね。
ECM Punk w/ Lucy vs. Brad Bradley w/ Carmine Despirito
  何処の団体にも悪ボスは居るようで、ブラッドレイの後見人として人相
 の悪いオッサン(C.ディスピリート)が登場。人気者のパンクに一通り
 ケチを付けて試合が開始されました。で、パンクが披露した雪崩式のペ
 ディグリーなんて見せ場もあったものの、結局悪ボスの介入からブラッド
 レイがチェーンを足に巻いてのビッグ・ブーツをパンクに放ちジ・エンド。
 やはり悪ボスの暗躍はメジャーもインディも一緒やと確信した次第です。
F"Fatal 4 Way"
 "Kamikaze" Ken Anderson vs. "Classic" Colt Cabana
 vs. Dino Bambino vs. Chris Hero
  デス・マッチ・トーナメントと別枠の各試合、手抜きとまでは言わんでも
 力の入らん試合なんやろなって思われた方もいらっしゃると思われます。
 けどどうしてどうして、流血も残酷シーンも皆無ですがMAWヘビー級の
 ベルトを巡る4コーナー戦は、4名それぞれが試合で自己主張を行った
 上での20分を越える熱戦となりましたんや。
 結果はアンダーソンのズル勝ち防衛ですが、MAWがデス・マッチ・オン
 リーの団体やないって事が証明された一戦でしたワ。
 ただしSMARTMARKの映像編集者さん、熱戦の影響やろか試合直
 後にカバーナがリングに吐いたゲロまでアップでを撮影せんでも良かっ
 たんやないでっか(苦笑)。
GIan Rotten vs. Mad Man Pondo
 Taipei and Four Corners of Glass Death Match
  トーナメント準決勝第1回戦は、ロットンとポンドによる事実上の優勝決
 定戦って顔合わせ。序盤はタイペイ戦(割れたガラスをバンテージに装
 着して殴り合うって形式)のスペシャリストであるロットンがポンドの手に
 よって口の中に割れた蛍光灯を突っ込まれるなど劣勢でしたが、最後は
 蛍光灯の入れられているゴミ箱へポンドを頭から投げ込んで大逆転。
 見事にロットンが決勝戦へ駒を進めております。
 しかし所謂プロレス技ってのを殆ど使用せず、ただただ相手の額を有刺
 鉄線や蛍光灯の破片等で切り裂き合うこの試合、初期ブラック・サバスの
 楽曲群と同様に解けた重金属って趣き(訳の分からん形容やね、ゴメン)
 でしたワ。
HDysfunction vs. Corporal Robinson
 Elctrified Light Tubes and Barbed Wire Boards Death Match
  トーナメント準決勝第2回戦、点灯している蛍光灯&有刺鉄線ボード
 がリング上の4つのコーナーに設置されて舞台設定は準備完了や。
 後はディスファンクションとロビンソンが各々、あわやって場面を盛り込
 みつつトラップに被弾して行きました。けど残酷なようですがこの手の試
 合、やはり用意したトラップは全部踏み抜くってのが不文律でっせ。
 で、試合の結果ですがロビンソンが勝利を収めておりますワ。
ICorporal Robinson vs. Ian Rotten
 Barefoot Thumbtack, Broken Glass,
 Staple Gun Death Match
  遥々来ましたデス・マッチ・トーナメントの決勝戦。ロットンとロビンソン
 の顔合わせとなったんですが、試合前のリングにEの試合で暗躍して
 いた悪ボスが再び登場。どうもロットンに対して決勝戦である画鋲マッ
 チを“裸足”でやらんかいって無理難題を押し付けたみたい。
 で、渋々この条件を飲んだ対戦相手のロットンを見てロビンソンの男気
 に火がついたんでしょうな、なんとロビンソンまでがリング・シューズを脱
 いで“裸足”になってしまいました。
 そして始まった両者“裸足”の画鋲マッチ、各々が素足を画鋲トラップに
 突っ込まれ、ロットンに至っては両足とも足の裏に工業用ホチキスで紙
 幣を打ち込まれるって惨状へと突入ですワ...(痛)。
 両者ともに足の裏を負傷したため若干試合に機敏さが欠けてしまう結
 果となってしまいましたが、最後はロットンがロビンソンをDDTにて画鋲
 トラップへと叩き込みトーナメントを制しております。

【総評】決勝戦が幕となった途端、リング上にはトーナメント参加者が全
 員勢揃いしてチープなこと極まりないトロフィーと勝者ロットンを囲み大
 団円。もともと本トーナメントにおいて各試合は予選道中からずっと、相
 手との握手で始まり、選手同士の熱い抱擁で終わるってものでして、試
 合中のドロドロの血の抗争とは正反対の礼儀正しさがありましたんや。
 で、ワシは思うんやけど、今回のトーナメントって選手間の遺恨が積もり
 積もっての開催ってプロレス業界によくあるパターンではなく、単に【デス
 ・マッチって表現手段が好きな奴はこの指にとまって】ってノリやったんや
 ないやろかと。そやから握手で始まり、互いの健闘を称える抱擁で終わ
 ることが出来たんでっせ。
 これだけ自身や相手の体を傷つけてなにが【表現】やねんと言われたら
 返す言葉もおまへんが、地獄絵図のような試合内容やのに、ワシには
 どこかしら清々しいものさえ感じられた興行でしたんや...。
 プロレスって芸はホンマに奥深いものやなァ。


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