では収録内容の詳細を

CYBERSLAM 1999 (約2時間5分収録)
 このDVDは99年4月3日に、ECWアリーナにて開催された定期戦
を収録したものですんや。当時のECWの状況はというと、看板選手
の相次ぐメジャー団体への転出と運転資金の枯渇から、団体運営に
黄色信号が灯っていた時期であり、この夜に先立つ99年3月13日
に催されたECWアリーナでの定期戦では、トミー・ドリーマーの口か
ら観客に正式に団体が直面する『資金問題』が語られたそうですワ。
さて屋台骨がグラついた団体において、それでもここがワシらの職場
やと各選手が思っていたのかどうか。このDVDで検証してみるのも
御一興。今回のレビューも、ワシの相方である道頓堀太朗に登場を
願い、二人の与太話を収録するって寸法でやってみますワ。
よって以下は(太):道頓堀太朗の発言、(次):ワシの発言です。

@Jerry Lynn vs. Yoshihiro Tajiri
(太)またお前との対談か。毎日毎日舞台でお前のつまらん顔を見て
  るんやから、オフ・タイムの時ぐらいはそっとしとてい欲しいワ。
(次)そない嫌がんなや。午前の舞台は終わったし、次の出番までち
  ょっと時間を割いてくれよ。昼飯くらいなら奢ってやるから。
(太)それならそうと先に言え。よっしゃ分かった、この間借りていたE
  CWのDVDを適当に喋ったらエエんやな。
(次)おいおい、適当って...。
(太)確か第1試合はタジリとリンの一戦やったな。まだタジリもECW
  と正式契約して間なしの頃のはずで、現在のような怪奇派ギミッ
  クやなしに、大日本の頃に着用していた青色のショート・タイツ姿
  で登場や。“仕事師”のリンと礼儀正しく握手をして戦闘開始。
(次)文献によるとタジリとECWは98年の末か99年の初頭に正式に
  契約をしたそう。ほんま、僅か数年前やのに、怪奇派ギミックでは
  ない姿が今となれば非常に懐かしいな。生で観ていたIWAや大
  日本在籍時の試合の様子を思い出してしもたワ。
(太)相手となった生粋の“顔面怪奇派”のリンも、タジリをよく理解し
  とるようで、オープニング・カードとしては文句なしの内容やった。
  特筆すべきは、タジリの客の心を掴む術や。ポールEの助言があ
  ったのかも知れんけど、得意技のタランチュラや場外への月面水
  爆なんて取って置きのムーブは全て常連客の『麦わら帽』と『サン
  グラス』の前で披露。同じやるなら、一番効果的な場所を選択して
  やってやるって発想なんやろな。
(次)単に『麦わら帽』と『サングラス』に媚びただけかも...。
(太)アホか、そんなちっぽけな考えやから、お前の芸は何時までたっ
  ても成長せんのや。ちょっとはタジリを見習え。芸にはTPOが不可
  欠やとまだ気付かんのか。
A場面は変わって...。
(太)WCW時代のジェリコのグッズである“マンデー・ナイト・イズ・ジ
  ェリコ”のTシャツを着用したストームがリング上に。ホンマ、こいつ
  の野暮ったさって底無しやな。あれは狙って出せる味やないデ。
(次)かつての相方であるジェリコのシャツを着るとは、ストームも屈辱
  やろな。それでなにやら黄色い液体の入った小ビンを取り出して
  控え室のドリーマーを挑発しだした。
(太)英語が分からんから詳細は説明できんけど、すぐにドリーマーが
  出て来てDDT一発でストームをKO。黄色い液体をストームに掛
  けてしまいよった。ウーン、あれってオシッコなんやろか。
BNova & Chris Chetti vs.
Rod Price & Skull Von Crush (Big Vito)
(次)お次のロッド・プライスなんやけど、こいつって前にNOWの後楽
  園か大阪府立の興行で観た事がなかったか。
(太)そない言われたらそんな気もするけど、あんまり記憶が定かや
  ないな。ビル・アーウインやったら覚えてるんやけどな。
    ※さっきアパートの押し入れから資料を引っ張り出して調べた
     んですが、94年4月16日に大阪府立体育館第2競技場に
     てNOWが催した故直井敏光選手追悼チャリティー興行で、
     ロッド・プライスは観ておりました。しかもビル・アーウインと
     セミで闘っていたビッグ・ジョニー・ホークって現在のブラッド
     ショーやんか。そうか、ワシらってブラッドショーを観た事が
     あったんやね。たまには古い資料も読み返してみるモンや。
(次)それどころか、もしかするとスカルって奴も観た事があるかも。
  こいつは後に『ハゲちゃんズ』のビィトーとなるんや。
(太)ま、特筆すべき事のない前座試合。ノバァ&チェッテイの合体
  フィニッシュ・ムーブがそこそこ美しかったのが目に付いた程度。
(次)二人揃ってコーナー・ポストからボディ・プレスとレッグ・ドロップ
  を同時に見舞うってヤツやな。
CSuper Crazy vs. El Mosco del Merced
(太)ワシらの間では比較的評判の高いクレイジーの試合やな。
(次)相手のモスコ・デ・ラ・メルセーやけど、ゴングの年鑑によると
  オリジナルとAAA版の二人が居るそうや。なんでもオリジナルの
  方がAAAの敵対団体であるプロモ・アステカに転出したよって、
  版権を持つAAAが怒って別人をモスコに仕立てたらしく、同名の
  レスラーが二人居るって事態になったらしい。ちなみに名前を訳
  すると『蚊男』となるんやそうですワ(笑)。
(太)なんや痒くなってきそうな名前やな(笑)。けどそれなら、クレイ
  ジーが背中に大きくアステカって書き込んでいるんやから、この
  蚊男もアステカ所属のオリジナル版なんやな。それにしても両者
  ともに手の全く合っていないダメ試合やったな。
(次)ルチャは段取りが命やのに、あれだけ二人の息が合わんと試合
  にならんデ。特に蚊男なんてアップアップやった。クレイジーのコー
  ナー・ポストからの倒れ込み式の頭突きの場面を覚えてるか。
  あんなに早くすかしてしもたんでは、クレイジーもなす術がないワ。
(太)やや強引にクレイジーが幕を引いたけど、試合後は彼自身がダ
  メやったって仕草をしとったモンな。ワシらが批判せんでも、当の
  本人が一番良く理解しとる。ま、これが唯一の救いなんかもな。
(次)蚊男、これでメキシコへ強制送還されたんやろなァ...。
DTAKA Michinoku vs. Papi Chulo (Essa Rios)
(次)WWFからスーパースターのTAKAが御帰還や。
(太)相手のパピ・チューロも、後にエッセ・リオスとしてリタの踏み台
  役で日の目を見る選手やデ。
(次)踏み台役で日の目って、お前の日本語はヘンやないか。
(太)細かい事は気にすな。とりあえずTAKAが堂々たる横綱相撲で
  パピ・チューロを一蹴。フィニッシュとなったミチノク・ドライバーも
  説得力満点やった。さぁ、次に行こ。
DECW World Television Championship
Rob Van Dam vs. 2 Cold Scorpio
(次)なんかさっきの試合解説、ちょっと手抜きやなかったか。
(太)なんでや、長々と誉めればエエってモンでもないやろ。
(次)そうかなァ。で、この試合もWWFからまたまたスーパースター
  が御帰還。今度は2コールド。ワシは大好きな選手なんや。
(太)ブッカーTのプロト・タイプって感じやな。客席からも“お帰り・コー
  ル”が掛っていたし、やっぱりこいつはホンマに人気モンや。
(次)RVDの持つTV王座を懸けた試合なんやけど、途中サブゥの意
  味不明の乱入こそあったものの、握手で始まり握手で終わる、な
  かなか清々しい試合やったな。ただし2コールドの持ちネタである
  難易度の高い飛び技のオン・パレードが控え目であったよって、
  この点はちょっと不満や。例の両手をクルクルって回すお約束の
  仕草も出て、客席でも期待は高まっていたみたいやったし...。
(太)難易度の高いムーブならRVDもお手のものやろ。試合が始まる
  前は両者の技の競演を期待したんやけどなァ。ま、フィニッシュと
  なったRVDのヴァンダミネーターはそれでも見事やったワ。
(次)勝敗は抜きにして、久々に帰って来た2コールドなんやから、R
  VDも少しは花を持たしてやって欲しかったな。
FUndisputed ECW World Championship
Taz vs. Chris Candido
(太)WWFで一躍有名になった統一王座やけど、これは数年前に
  ECWでも実現しとった。詳しくは、お前が喋れ。ワシは休憩や。
(次)はいはい分かりました。ECWにおける統一王座とは、ECW世
  界王座と、タズが勝手に創設したFTW王座を統一したもの。
  ちなみにFTWとは『ファック・ザ・ワールド』の略で、孤高の王者タ
  ズらしい命名や。それに画面を観るとお分かりいただけるやろけ
  ど、タズの右手に巻かれたバンテージにも“FTW”と殴り書きが
  ある。尚、この2本のベルトが統一されたのは、この夜の2週間程
  前の事。99年3月21日に催されたPPV『LIVING DANGEROU
  SLY’99』においての出来事で、ここでタズが保持するECW王座
  と、タズが創設したもののサブゥの手に渡っていたFTW王座とが
  統一王座として両者の間で争われ、顎の骨折って最悪のコンディ
  ションで試合に臨んだサブゥをタズが下し、晴れて初代統一王者
  となったんですワ。あぁ、疲れた。
(太)お疲れさん、よく調べたな。感心感心。ま、そんな歴史を持った
  非常に重たいベルトな訳や。よってキャンディード君では如何にも
  荷の重い王座。タズの片羽締めからのスープレックス、所謂タズ
  プレックスにてコーナーに立て掛けた机に投げつけられ、哀れキャ
  ンディード君は担架送りとなってしもた。
(次)実力差、実力差とよく言うけど、正にこれこそ実力差なんやろな。
(太)試合以外で見所を探すなら、ピンクの透け透けのガウンを羽織
  ったタミー・リン・スイッチか。元はブリッ子マネのサニーちゃんなん
  やけど、寄る年波には敵わず露出の高さで勝負するようになって
  しもた。ただしなんぼ露出してもワシの好みやないんや、これが。
(次)ワシも苦手なタイプや。しかも長い事業界に居るのに、プロレス
  の機微ってモンがいまいち理解できてないし。
GShane Douglas vs. Justin Credible
(太)プロレスの機微なら、塾長が育てたフランシーンがダントツや。
(次)オッ、上手い事この試合へ移行したな(笑)。
(太)それにしても僅か数年で、ECWも相関図が様変わりしたよな。
  何とこの夜は塾長がベビーや。対するはストームやジャズ、『世界
  一セクシーな男』を自認する“両刀使い”のジェイソンらとインパクト
  ・プレイヤーズなるユニットを結成したジャスティン・クレディブル。
(次)これまでなら塾長の節目節目での反則を織り込んだコッテリした
  プロレスに、フランシーンのタイミングを絶対外さん、ベビー側を応
  援する者には実にフラストレーションの溜まる介入を加えて、誰が
  相手でも常にワン・サイド・ゲームで勝って来たモンやのに、クレ
  ディブルのラフ攻撃に何とあのフランシーンが抗議しとったな。
(太)しかもそれを常連の『麦わら帽』と『サングラス』がバックアップし
  とるんやもんな。『麦わら帽』&『サングラス』と、フランシーンの気
  持ちが合致するやなんて未来永劫ないと思っていたんやけどな。
(次)けど、これが当時のECWの“風景”やったんやろな。
(太)試合はダグラス塾長の珍しい大流血をアクセントに、ジャズとフ
  ランシーンのキャット・ファイト、ジェイソンの乱入と見所たくさん。
  フィニッシュは塾長の『ピッツバーグ・プランジ』って名の網打ち式
  原爆固めが炸裂し、ジャスティンに土が付くんやけど、ここですか
  さずストームが乱入し、ジャスティンと二人でダグラスを攻撃。
  で、ここにダグラスを助けようとドリーマーが駆け付けて、ダグラス
  &ドリーマー対ジャスティン&ストームの構図が完成。この続きは
  99年5月16日に開催される次回PPV『HARDCORE HEAVE
  N’99』でどうぞって寸法やったのに...。
(次)寸法やったのに...。
(太)寸法やったのに、この夜の直後にダグラスとプロデューサーの
  ポールEとの確執が表面化し、ダグラスはECWを離脱してしまう
  んや。もともと両者ともプロレスって芸を構築する頭脳は素晴らし
  いものを持っているし、両者ともに余裕のある状態なんやったら、
  少々の意見の食い違いも笑って解決できたんやろけど...。
(次)やはり冒頭で触れたECWの経営難って問題が、大きく影を落
  としてしもたんやろな。お互い、相手の能力は高く評価していても、
  相手の言葉を素直に聞けん事ってままあるもんな。
(太)ま、内情を知らんワシらがなんぼ語ったってただの詮索でしか
  ないから、ここら辺で止めとこか。それよりお前も、ちょっとはワシ
  の話を素直に聞けよ。
(次)はいはい、悔い改めさせてもらいますワ。
HThe Dudley Boyz & Mr. Mustafa vs.
New Jack & Axl Rotten & Balls Mahoney
Steel Cage Match with Weapons, Thumbtacks, Fire!
(太)やっと最後の試合まで辿り着いたな。
(次)前の試合に引き続き、この試合も背景は複雑やデ。
(太)よっしゃ、またお前が詳しく喋れ。
(次)邪魔くさいなぁ、ちょっとはお前も手伝えや。まあ、仕方ないか。
  この試合、パッと組み合わせを見るとダッドリーズ対ロットン&マホ
  ーニーの基本ラインに、ムスタファとニュージャック親分がそれぞれ
  加わっただけの捻りのないカードに見えるやんか。けどムスタファ
  とニュージャック親分が袂を分かっている事こそが一大事なんや。
  あの思想派過激黒人ユニットのギャングスターズを構成していた
  ニュージャック親分とムスタファが、2月12日の定期戦でのムスタ
  ファ職場復帰〜親分へのダブル・クロス決行〜ムスタファのダッド
  リーズとのシェイク・ハンドが原因で対立し、3月21日に催された
  PPV『LIVING DANGEROUSLY’99』において凶器持ち込み
  OK戦で親分がムスタファを完全KO。これを引き継いだ形で、ダッ
  ドリーズとロットン&マホーニー巻き込み、金網時間差ランブル戦
  としたのが、この夜の試合や。
(太)WWF転入後は流血戦もめっきり少なくなったダッドリーズやけ
  ど、さすがにこの時点ではバリバリの武闘派。ロットン&マホーニ
  ーかて流血を拒むヤワな奴らやないし、その上暴れ出したら誰に
  も止めれんギャングスターズが敵味方となってしもたんや。荒れま
  くった試合になっても全然不思議やないな。
(次)金網への参戦順は、マホーニー、Dボン、ババ、ロットン、ムスタ
  ファであり、最後にゴミ箱一杯の凶器を詰め込んだニュージャック
  親分が登場。ギター・ショットも惜しげもなく披露してくれた。
(太)ロットンも画鋲を持ち出し、これに自爆しとるし、マホーニーは
  炎攻撃を出してくれるなど、それぞれ持ちネタを大盤振る舞いや。
(次)試合はマホーニーの火炎攻撃直後に、お返しとばかりダッドリー
  ズの必殺の3Dがズバリ決まり、マホーニーに土が付いた。
(太)で、これにてお役御免とダッドリーズはスタコラサッサと金網から
  逃げ出し、中には親分&ロットン&マホーニーと、逃げ遅れたムス
  タファのみ。しかもリングの四方は高い高い金網に囲まれて...。
(次)親分の見せ場である『自殺ダイヴ』の舞台装置が整った、と。
(太)ロットン&マホーニーが、粛々とムスタファをリングの中央に置い
  た机の上に寝かせ、親分が金網最上段からここへダイヴを決行。
(次)これにて本日の出し物は全て終了ですって“ショー・ストッパー”
  の役目をバッチリと果たしてくれた。
(太)“ショー・ストッパー”か、ほんならこれで本日の対談も終わり。
  さぁ昼飯を奢ってんか。今日の対談の“ショー・ストッパー”は、何
  時もの定食屋のカラ揚げ定食でエエわ。メシは大にしといてや。
(次)税込み780円の“ショー・ストッパー”か...。
  ※平成14年9月21日(土)、楽屋の休憩コーナーにて


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