では収録内容の詳細を

BARELY LEGAL 1997 (約2時間26分収録)
 金や人格には問題があるらしい(失礼)ポールEやけど、ことプ
ロレスってモンをプロデュースさせたら右にでる者は居ないやろ。
で、そのポールEが己の能力を最大に発揮できた場所が、ECW
なんですワ。勿論使う選手もポールの御眼鏡に掛かった奴だけ。
しかもECWの常連客ってのがこれまたクセのありそうな連中ば
っかりで、創る側、演ずる側、観る側が互いに影響を与え合って
遂に団体初のPPVにまで漕ぎ着く事に。
これはその初PPVを完全収録したDVDで、ECWマニア必携の
作品ですワ。以前サムライTVで3回に分けて放送された事が
あったけど、今回は耳障りな日本語解説もないし、あっと言う間に
貴方をフィラデルフィアのECWアリーナに連れて行ってくれまっせ。
尚、PPVのタイトルである『BARELY LEGAL』、直訳するなら
『なんとかギリギリで合法』って意味で、このタイトル名だけでも思
わずニヤリとなってしまいまへんか。

@The Dudley Boyz vs. The Eliminators
  ・ECWのPPVというと、冒頭に実況のジョーイ・スタイルスが
  前口上を述べるのが決まり事になるんやけど、当然これが
  その第1回目。完全に観客も出来あがっていて、さぁこれから
  ってところで、悪者コンビのダットリーズがリング上を占拠。
  見るからに暑苦しいお抱えリング・アナのジョエル・ガードナー
  がベラベラと喋っていると、対戦相手のイリミネーターズが
  登場。やっと第1試合目の開始となりますんや。
  多分ポールEも初PPVの第1試合である事から、どんなカード
  にするか悩んだ(一度、そんな贅沢な悩みを抱えてみたいな)
  やろけど、ご自慢の両チームによるタッグ戦が選ばれよった。
  試合はイリミネーターズの必殺技『完全殺戮』によりババが
  フォール負け。タッグのベルトを渡すことになりましたんや。
ARob Van Dam vs. Lance Storm
  ・晴れのPPVに右腕負傷のため出場出来なくなったクリス・キャ 
  ンディードが自身の身の上を嘆いたあとは、RVDとストームの
  一騎撃ち。RVDはどうしてもポールEが欲しかった選手やそう
  で、ストーム相手に持ち味を充分に炸裂の上で勝利ですワ。
BGreat Sasuke, Gran Hamada, and Masato Yakushiji vs.
 Taka Michinoku, Mens Teoh, and Dick Togo
  ・若きファンのみなさんには信じられへんでしょうが、こんなカード
  が組まれていたんですワ。究極のプロレス・オタクであるポール
  Eが、多分自分が見たくって、そしてファンに見せたくって特別に
  サスケらを呼んだんやと思います。そしてオタク度ではポールEと
  タメを張れるジョーイ・スタイルが詳細に、そしてとことん執拗に
  日本から来た旅芸人達の情報を話してくれますんや。例を上げ
  るなら、浜田は新日本の道場で修行をし、メキシコへ渡った
  45才のベテラン。サスケは獣神(ちゃんと発音しとるデ)サンダ
  ーライガー相手に、6万以上の観客で埋まった東京ドームで試
  合をやった、とか。勿論各自の技の名前なんて朝飯前や。
  とにかく観て、ではなくって一度聞いてみて。日本のプロレスに
  これほど造詣の深い人がアメリカに居るんやって驚くから。
  尚、TAKAを筆頭にルード組はみんなnWoをパロったbWoなる
  おちゃらけ軍団に事前に勧誘されており、この試合でもお揃い
  のTシャツを着てますワ。そして、この試合がきっかけで、TAKA
  がWWFへと渡る橋がかかったんですな。
CShane Douglas vs. Pitbull #2
  ・ワシが尊敬するインテリ・レスラーの代表格であるダグラス先生。
  試合中のハプニングでピットブル1号の首を負傷させてしもた事
  が発端(一度は回復したものの、2月1日の定期興行で自爆気
  味のアクシデントが再度1号の身に降り掛かるのです)となって
  ピットブル2号との抗争がまたまた始まり、この夜に至るまでそ
  れはそれは先生は悪行を重ねて来たものです(笑)。
  で、いよいよ決着戦となるんやけど、重厚な試合の後にはマニ
  アの皆様お待ちかねの隠しダマも登場し...。
  尚、この後『クイーン・オブ・エクストリーム』と呼ばれ、ECWが
  崩壊する直前には女性ながら団体の精神的支柱にまで成長
  するダグラスのマネ役のフランシーンには、試合中に「オマエ
  は性病持ち」なる、とんでもないコールが掛かります(苦笑)。
  あ、この試合ですが、TV王座が懸かっておりました。
ETaz vs. Sabu
  ・『世紀の遺恨戦』と紹介された本PPVにおけるメインがこれ。
  勿論今回のPPVが決着戦となるんやけど、ここに至るまでに
  ポールEが率先してネタを仕込みまくったモンでした。
  なんでオマエがそんな事を知ってるんやと思われるでしょうが、
  以前衛星放送でガオラ・チャンネルがECWの米国での定期放
  送を流していた事があって、そこで毎週毎週くどい程に伏線が
  張られていったのを観ていたんですワ。
  この番組は試合半分、トークと伏線と予告が半分って感じの
  構成で、プロレス界で使われた全てのアングルとギミックの
  集大成的な最高の番組でしたんや。
  さて、試合の方やけど、どちらも最初期は怪奇派のレッテルが
  張られていて、共に日本のインディ・マットに登場し評判の上
  がったところまで共通のタズとサブゥ。
  ポールEが自信を持って繰り出した試合やから、当然外れな
  んて事はおませんデ。
  しかも最後の最後に大どんでん返しも用意されており、プロレ
  スって芸が好きな方なら、必ず満足するよう仕上ってますワ。
FStevie Richards vs. The Sandman vs. Terry Funk
GTerry Funk vs. Raven
  ・先の試合がこの夜のメインなら、これはボーナス・マッチ。
  ただし一切出し惜しみのないボーナス・マッチやって事は、
  ご覧になっていただければすぐにご理解いただけるはず。
  まずレイヴェンの保持する王座に挑戦する権利を得るため
  に、レイヴェン一家の元若頭(当時ECWマットを席巻してい
  たbWoブームを追い風に、親分のレイヴェンからの独立を
  画策中であった)リチャーズ、『ハードコア・アイコン』と呼ば
  れる事になるサンドマン、そして老いてますます盛んな『テ
  キサス・ブロンコ』テリー・ファンクが3WAYダンスで激突や。
  今でこそ同時に三人が戦う事も珍しくなくなったけど、最初
  にこの変則マッチを始めたのはECWなんでっせ。
  試合やのに、『ダンス』って名付けたところに、ポールEの
  センスの良さを見る思いがしますな。
  試合はテリー・ファンク師匠の正に独壇場。芸歴ウン十年
  で培って来たネタの数々が惜しみなく披露されますんや。
  そして何とか挑戦権を得た後は、ヨレヨレのままレイヴェン
  との王座戦へ移行。しかし3WAYダンスで消耗しきった
  テリー師匠にもう試合をやる力は残されておりまへん。
  ましてレイヴェンにはヨレヨレのテリー師匠をリードして試
  合を構築する腕はないし。仕方がないからレジー・ベネット
  (懐かしいでしょ、ボヨヨンの巨乳ネエさんですワ)、当夜
  試合の組まれなかったトミー・ドリーマー、ダッドリーズの
  一員ビッグ・ディック(先日亡くなられました)を絡ませて、
  最後はテリー師匠渾身のヨレヨレ丸め込みで幕。
  遂にベルトがテリー師匠のものとなったんですワ。

<総評> 2001年に話題となった映画『ビヨンド・ザ・マット』
 には、この夜のバック・ステージの様子が克明に描かれてい
 るんやけど、さすがに初のPPVで諸問題が噴出していたら
 しく、戦場さながらの混乱した様子が収録されてたやんか。
 けどどれだけ混乱しとっても、ポールEは人生の絶頂期にあっ
 たんやと思うワ。自ら選んだ選手を使い、自ら書いたであろう
 筋書きを用い、自ら選んだであろうフィニッシュを付ける。
 しかもそれで、小さいとはいえECWアリーナを埋めた筋金
 入りのマニアどもが熱狂しとるんやモンな。
 このDVDを観ると何時も羨ましく思うんや。プロレスを創る
 事の愉悦を味わい尽くしたポールEを。
 最後になったけど、この興行が行なわれた日付を記します。
 1997年4月13日ですワ。


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