では収録内容の詳細を

UNSCARRED : THE LIFE OF NICK
MONDO
(約2時間40分収録)
 2003年7月26日開催のCZWによる『トーナメント・オブ・デス・2』にて満
身創痍となりながらもトーナメント制覇を果たし、これを機に選手生活に一応
のピリオドを打った“シック”ニック・モンド。
大日本プロレスに参戦した事もあったのですが、何分にも選手生活が余りに
短くって、ワシら日本のプロレス・ファンにとっては、正に一陣の風のようにマ
ット界を吹き抜けてしまった感じ。
もっともっと彼の試合が見たい、彼の人となりが知りたいなんて願っていた
人も居たのではないやろかって思っていたら、彼のヒストリーもののDVD
発売される事となりましたんや。これ、CZWの編集ものDVDなども発売して
いる『Extreme Entertainment Group』が製作しておりまして、ニック・モ
ンドの独白を主軸に、彼の両親やレスラー仲間などがコメントを寄せ、断片
的ながら試合中の名場面(血だらけの姿ばかりやけど)なども盛り込んで、
多角的に人物像を炙り出して行こうって趣向の作品。
例によって英語のヒアリングに難のあるワシなので、モンドの発言の詳細に
までは触れる事が出来ませんでしたし、彼のプロレス活動の原点であるバッ
ク・ヤード・レスリング(以下BYWと略します)についても勉強不足。
ニック・モンドって好漢を語るのに最適なDVDであるはずなのに、皆様には
申し訳ない限りでありますが、まァ言い訳ばかり並べても仕方がないので、
そろそろレビューへと移りますワ。

○Opening
  自らもJCWなる団体を運営(?)しているヒップ・ホップ・グループのICP
 (Insane Clown Posse)の“Homies”って曲をBGMに、BYWの試合の模
 様を挿入したもの。特にニック・モンドが映っているって訳ではなく(JC・ベ
 イレイらしき奴は確認出来た)、内容もプロのレスラー(ってのも今や曖昧
 な区分けですが)達が毛嫌いし、米国では社会問題にまで化しているらし
 きBYWが端的に理解出来る仕上がり。初めて観たBYWについてのワシ
 の正直な感想ですが、“ウーン、これはアカンでしょ...。”
@Intro
  素のホーレス・ザ・サイコパスによるコメントを冒頭に、CZWでの名場面
 などを散りばめつつ、マット・バーンズ(元ニック・モンド)が語り始めます。
AChildhood
  まずは十代の悪戯と片付けるには余りに度の過ぎた所業の数々から。
 ビデオ・カメラってのが何処の家庭にも行き渡っているため、悪戯は全部
 録画されていて、このDVDにもしっかり映像収録されております。
 ただ、果たしてこれが『作品』であるのかと問われると...。
 で、日頃の悪戯が友人達とのBYWごっこに発展。これも固定ビデオ・カメ
 ラで撮影されていて映像収録もされておりますが、十代半ばのガキどもが
 ヘラヘラ笑いながら蛍光灯で友人達と殴り合っている様子ってのは、やは
 り何処か狂っているとしか思えませんワ...。
 そして1998年、高校を卒業したモンドは職を得た(コンクリート関係の会
 社やったそうです)ものの、レスラーになるって望みを捨てきれず...。
BTraining
  99年1月、モンドはオハイオ州のクリーブランドにあるレスリング・スクー
 ルに入ったのだそう。どうやらアル・スノーに師事したらしいです。
CBeginning The Career
  ローカルの独立系団体でキャリアをスタートさせたモンド。画面の中では
 450スプラッシュなどをガンガン放ってます。そしてPCW(Pennsylvania C
 hampionship wrestling)って団体で“ハードコア”ニック・モンドなるギミック
 に開眼。試合ではシンガポール・ケイン・マッチで体中をシバキまくられて
 おりますワ。
D2000
  2000年の夏、トレント・アシッドとの一騎打ちにてCZWデビュー。また、
 当時のCZWと大日本プロレスは友好関係にありまして、CZWとの団体
 抗争アングルの波に乗っかり、モンドも大日本プロレスに勇躍参戦。
 ここでは僅かだけですが、大日本プロレスでの試合模様も収録されており
 ます。※大阪鶴見緑地大会と思える映像もあるけど、ワシも映っていない
 やろかなァ。
E2001
  CZWを主戦場に、モンドの過剰なバンプが炸裂。お母さんのコメントも
 収録されておりましたが、我が子のあの悲惨な姿をどない思っているのや
 ろかね(理解出来んとおっしゃってました、当然ながら)。また小雨の屋外
 興行で行ったニック・ゲージとの対戦は凄惨なシーン続発。フィニッシュも
 ゲージが蛍光灯設置の燃え盛るテーブルへ叩き込まれるってものやデ。
F2002
  奥さんであるボニーさん(元はレインって名の女子レスラー)のコメントに
 始まり、モンドは自らベスト・マッチと胸を張るメサイアとの一戦、ホーレス・
 ザ・サイコパスとの試合などに触れております。けどこの年のハイライトは
 やはり8月31日にCZWが開催した『第1回トーナメント・オブ・デス』
 予選でのホームレス・ジミーとの高所落下スポット、準決勝でのメサイアと
 の蛍光灯戦。そして決勝では『妻殴り』ことワイフ・ビーターに携帯用の芝
 刈り機で横腹を切り裂かれて...。
 この2001年から2002年にかけてが、ニック・モンドって名の“狂ったダイ
 ヤモンド”が一番輝いていた時期やね。
G2003
  2003年はCZWの総帥であるザンディグとの絡みからスタート。また交
 通事故により首に負傷もしてしまいます。
 そして秘めた思いを持って臨んだのが、7月26日にCZWが開催した『第
 2回トーナメント・オブ・デス』。準決勝でのザンディグとの高所落下スポット
 はもう半歩間違えば両者とも重傷を負っていたであろう危険極まりないも
 のやったし、その命懸けのスポットを乗り越えて決勝へ進んだモンドは、I
 WAミッドサウスの重鎮イアン・ロットンも下してトーナメントを制覇。
 冒頭にも書いたけど、結局これがモンドの最後の試合となったんですな。
 あ、ちょっと気になったけど、『第2回トーナメント・オブ・デス』の模様だけ
 が他と比べて圧倒的に画質が劣るんや。これってやはり、『第2回トーナ
 メント・オブ・デス』の正規版を買えって無言のメッセージやろかね。
H2004
  レスラー生活にピリオドを打ち、ネット上の噂では美術大学へと復学した
 らしいモンド。彼のキャリアを改めて周囲の者が語っております。
 また『Extreme Entertainment Group』って会社がBYWをテーマにし
 たビデオ・ゲームのソフトを製作し、モンドは実名でキャラクター化されまし
 た。ゲームのデモ画面では野良猫を蹴り飛ばすシーンがあるけど、実物
 のモンドは動物虐待なんてしない奴であって欲しいなァ(いや、ホンマ)。
 で、最後は過去の名場面をフラッシュ・バックさせての大団円。

【DVD特典映像】
○Hall Of Pain : UnF'nbelivable Backyard Wrestling
  『Extreme Entertainment Group』から発売されているBYW系DVD
 の名場面集。そして何故か長時間収録されていたのが、XPWの2002年
 2月23日の定期興行よりチョイスされたニュー・ジャック親分とビック・グラ
 イムスによる高所落下マッチ。これ『FREEFALL』ってタイトルで既にレビ
 ューもアップ済なんやけど、あの命懸けの落下スポットも結局はBYWの延
 長やろって意味で収録されたんやろか?。 
○Ultra-Sexy Backyard Babes
  BYWに彩りを添えるお姉さん達の映像。シリコンで盛り上げたオッパイが
 丸出しになっており、編集が荒いためか秘部も確認可能で...。
○Hard To The F'n Core Music Video
  本編のオープニングを飾ったICPの“Homies”を再録。
○Making Of "Backyard Wrestling"
  『Extreme Entertainment Group』って会社はBYWをテーマにしたビ
 デオ・ゲームのソフトも製作しているみたいで、どうやらここに収められたの
 はゲーム・ソフト発売記念のプロレス興行みたい。
 プロレスもラップもお手の物のICPを筆頭に、ニュー・ジャック親分、ビック・
 グライムス、スプリーム(懐かしい!)、マッド・マン・ポンド、サンジェイ・ダッ
 ド、エル・ドランコらちょっと気になる奴らがわらわらと大集合。単体でこの
 興行模様が商品化されて欲しいなァ。
 尚、上記したここまで4つの特典映像は連続再生も可能で、合計で25分
 弱程収録されておりましたワ。
○Unedited "Unscarred" Director's Cut !
  特典映像だと簡単に流してしまえない、本編のディレクターズ・カット版。
 本編が40分強の収録時間であったのに対し、こちらは1時間12分の完
 全版となっております。
 以下に、本編では削除されていたシーンを記しておきますワ。
 ◇本編にも収録されていた十代の頃の悪戯をヴォリューム・アップ。
 ◇美術大学に通っているらしいモンドですが、ちょっと不気味な自作の絵に
  ついて語っております。
 ◇本編にも収録されていたBYWごっこをヴォリューム・アップ。
 ◇大日本プロレス来日時のオフ・ステージの映像。マッド・マン・ポンドと連
  れ立ってセブン・イレブンに入店し、おでんに興味津々でした。
 ◇ホーレス・ザ・サイコパスとのケージ戦。
 ◇IWAミッドサウスで行ったネイト・ウェヴとの一戦。
 ◇『Extreme Entertainment Group』の作品に出演しました。
 ◇奥さんであるボニー(元はレインって名の女子レスラー)の試合模様。
 どないでっか。大日本プロレスの項なんて、よくディレクターズ・カット版を収
 録してくれたと拍手喝采したくなるでしょ。
 どこに本編を40分強に編集する必要があったのかは分かりませんが、今
 後このDVDを再生する時は、本編ではなくってこのディレクターズ・カット
 版を観ることになるやろなァ。
○Uncensored Xtreme Sneak Previews !
  『Extreme Entertainment Group』から発売されている各種DVDの
 ご紹介コーナー。全部で14タイトル、20分程度収録されているのやけど、
 内容はどれもこれもバイオレンスとエロが充満した、なんともやるせない笑
 えぬ代物。ま、『ゴン』や『ブブカ』の映像版ってところやろか。

【総評】
  冒頭にも触れましたが“シック”ニック・モンドってレスラーの選手生活が
 極端に短かったため、これで(英語のヒアリングがお得意なら)充分彼の
 キャリアは振り返る事は可能だと考えます。
 ただ本編とディレクターズ・カット版を両方とも収める容量があるのなら、デ
 ィレクターズ・カット版から折角の映像素材を削除する事をせず、全てをキ
 チンと編集してこれを本編とし、ディスクの空き部分に2〜3試合程度彼の
 試合を完全収録してもらえたらと思いましたワ。
  それにしてもモンドがリタイアしたのは残念無念。今でも鮮明に覚えてい
 るデ、初めて『第1回トーナメント・オブ・デス』の映像を観た時に、モンドの
 試合から受けた衝撃は。ホンマ、21世紀のデス・マッチをリードしていくの
 はこいつやって直感したもんや。
 ま、あんな試合をやっていたら10年持つ選手生活も、たった数年で終わ
 ってしまってもちっとも不思議やないけど...。

★★重要情報@★★

 私どものHPによく遊びに来ていただいている『キングコングニーさん』
が、本DVDについての重要な情報を報告して下さいました。
例によってヒアリングが苦手だからと煙幕を張って、適当なレビューを書い
てしまいましたが、これはやはりキチンと掲載しておかなくては...。
って事で、以下に掲示板へ書き込んでいただいた情報について
無断転載いたします。
 ※『キングコングニーさん』毎度の事ですが、ごめんなさい...。


@ワシが書いた【レスラーになるって望みを捨てきれず】について

  と、いうよりレスリング・スクールに通う資金作りの為、12時間/日の
 刑務所建設の仕事をコンクリート会社で一夏行ったということのようです。


A大日本プロレスでの試合模様についてのモンドのコメント
  
  米国の会場は『狂ったように騒いで、ミスムーブをしようものなら、待って
 ました!とばかりに揚げ足を取りやがる。』
 日本の会場は『選手をリスペクトしてくれて、行儀良く静かに観戦。
 で、いいムーブが出るとソフトな拍手をくれるんだ。』


B携帯用の芝刈り機で横腹を切り裂かれ...、について

  『ファンに今まで体験した凶器で一番痛かったのは?って聞かれる
 けど、間違いなくこいつがダントツさ。』
 厳密には芝刈り機ではなくて、ウィード・ワッカー。
 構造的には、コイル状に巻かれた断面が四角いプラスチックの紐を先端
 に取り付け、両端をそれぞれ5cmくらい出してモーターで一方向に回転
 させ、へりにある刈りづらい芝や伸びすぎた雑草などを刈るのに使います。
 所詮プラスチックなので、石やコンクリートに当たると千切れて減っていき
 ますが、人の肌なんかは普通に切れるでしょう。

Cレスラー生活にピリオドを打ち...、について

 ・まず始めに、対ザンディグ&ネイト・ヘイトリッド戦で三度のパワーボム
 と背中へのハードなチェアー・ショットを受け脊椎に違和感を感じ、
 ・次に、イタリア遠征の時に高速道路で後ろから追突されて頚椎を
 損傷(にも関らず、ファンの為にレスリング・スクールを強行)し、
 ・駄目押しとなったのが、第2回トーナメント・オブ・デスでの高所落下。
 彼の身体はほぼテーブルに触れずにコンクリートの地面に叩きつけら
 れ、半失神状態で最後まで試合を終えるも、夥しい流血と脊椎への
 ダメージの為、ドクター・ストップ。
 が、それを振り切り意識が飛びながらも決勝戦を戦い抜き優勝。
 療養の後にこの時の模様をビデオで観て、
 『知らず知らずのうちに、超えてはいけない一線を超えてしまっていた。
 こんなことを続けていたらいつ死んでもおかしくないじゃないか。』
 と引退を決意。

★★重要情報A★★

  私どものHPによく遊びに来ていただいている『温泉馬鹿のロ暴さん』
 が、大日本プロレスに参戦した際のニック・モンドにまつわる貴重な
 情報を報告して下さいました。
 折角の情報なので、以下に掲示板へ書き込んでいただいた内容に
 ついて無断転載いたします。
 ※『温泉馬鹿のロ暴さん』毎度の事ですが、ごめんなさい...。

  SICKのキャラになる前はSLICKのニックネームがついてました。
 大日本に来たのは、まだSICKになる前でしたね。個人的には、
 初めて話しかけた外国人選手なので、とても印象に残ってます。
 日本に来たのは、確か00年9月でした。後楽園ホールでは、
 ブッチャー&葛西&関本 vs. 妻殴り&ポンド&モンドのカード
 だったんですが、その試合をバルコニーで観てたら、トレント・アシ
 ッドがその様子をビデオカメラで撮ってました。おそらくは、DVDに
 収録されている、コンビニのおでんのシーンも、アシッドが撮った
 ものだと思われます。

  その試合では、モンドはブッチャーに血まみれにされ、なんとか
 試合について行っているという感じではありましたが、妙に動き
 に色気があって、観客の注目が行ってしまうような輝きを放って
 ましたね。乱戦の中で、見せ場はモンドソルト1発だったのです
 が、その1発が、凄く見事に決まったのが、印象に残ってます。

  その試合のすぐ後、今後はモンドがアシッドvsテイオーの試合
 をバルコニーでビデオ撮影してました。汗も拭わず、血だらけの
 まま、撮影してました。タイミングを計らって、サインを頼んだ
 ら、わざわざその場に正座して、書いてくれて、イイ奴でした。
 「ムーンサルト、ベリーグッド」と言ったら「サンキューベリー
 マッチ」と答えてくれました。

  また、アシッドとは同世代で、CZWのリングでも戦っていた
 経緯からか、来日参戦当時、地方でタッグを組んだ時は、仲間
 割れジョブなんかをやることもあったようです。

  モンドがSICKとなって本格的な輝きを放つようになってからは、
 来日することもなく、アシッドがその後、紆余曲折を経て、
 CZWから去ったのに対し、モンドはCZWでその短いレスリング
 キャリアを終えたというのも、それはそれで伝説になるというか、
 アリなのかもしれません。一度、SICKのキャラを日本で観てみた
 かった、という気もしますが。


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